軍用銃を語るうえで避けては通れぬ COLT FIRE ARMS
軍用ライフルの代名詞的存在であるM16。様々なバリエーションに展開しつつも、いまだにアメリカ軍をはじめとした多くの西側諸国で使用されており、そのレシーバーに印された「 COLT 」の名を知らぬ人は、少なくともサバゲープレイヤーの中には1人もいないだろう。
軍用銃といえば COLT という印象を与えるほどの知名度にも拘わらず企業としては既に買収されており、現在はチェコのCZグループ傘下に納まるという数奇な運命を辿った銃器メーカーである。
COLT の歴史
COLT (コルト)は1836年にアメリカ合衆国で創業された。当初の社名は「Colt Patent Firearms」で、世界初のシングルアクション・リボルバーを発明したことで有名である。ほぼ同時期にダブルアクション機構の開発にも成功したほか、20世紀初頭にはオートマチックピストルのM1911を開発。70年以上に渡る米軍主力ピストルの地位を維持し続けた。
M16の製造にあたってもその存在感は大きく、M16と言えば COLT の刻印を思い浮かべる人がほとんどであろう。M16の開発自体はArmaLite(アーマライト)によるものだが、経営難により1959年に製造権をCOLTに売却し、結果的にアメリカ軍に収められるM16シリーズはCOLTが生産を担うこととなった。
M16のアメリカ軍での正式採用以降、特にベトナム戦争では大規模な納入量を確保する必要があり、M16の製造権はアメリカ政府が取得することとなりCOLT以外の委託製造も行われるようになる。その後20世紀末には、COLTはカナダでM16のライセンス生産を行っていたDIEMACO(ディマコ)を買収し社名をCOLT CANADAと改めた。
出典:dvids(Sgt. 1st Class Brian Hamilton):アメリカ陸軍訓練教官校で使用されるM16A2
こういった歴史を見る限り、COLTは圧倒的な存在感を持つ軍用銃を生産したメーカーとして順風満帆なイメージを持たれがちではあるが、実態はそうでもない。
COLTは設立当初より開発・製造技術は高いものの、保守的な経営に端を発してリボルバーの市場確保に難儀。19世紀半ばに一度倒産を経験している。再起後、19世紀後半~20世紀の業績自体はかなり順調ではあったが1980年代のアメリカ軍正式ピストル・トライアルに惨敗し、冷戦終結に伴いM16の生産契約も打ち切りに。1992年に2度目の破産申請を行ったが、この時は実業家のDonald Zilkhaによる買収でことなきを得た。
21世紀に入ると民間部門をColt’s Manufacturing Company、軍用部門をCOLT DEFENSEとして分社したが、2013年のアメリカ陸軍によるM4カービン調達の打ち切り(FN HERSTALへの調達切り替え)を契機に更に業績が悪化。長い時間と共に危機感が薄れたのか、2度の倒産危機の経験が活かされることは叶わず、COLT DEFENSEは2015年に倒産している。2021年にはチェコのCZ(チェスカー・ズブロヨフカ)にColt’s Manufacturing CompanyとCOLT CANADAが買収され、独立した米国企業としての歴史に幕を下ろしている。
ただし、CZによる買収は北米市場や軍・法執行機関に強いCOLTとヨーロッパ市場と民間に強いCZがお互いを補完することを目的としており、買収後もCOLTとしてのブランド展開は継続している。実質的にCZの子会社となったものの、COLT CZ GROUPとして新たな歩みを始め、事業転換も工場閉鎖も行われず現状の経営を維持しているようだ。今後はCOLTによるCZ製品の生産や、COLTの新製品開発がCZによる支援で行われる計画がある。
COLT のリボルバー
回転式ピストルであるリボルバーはCOLTが開発したとされているが、実際のところ創設者であるSamuel Coltが「シングルアクション」と「ダブルアクション」の特許を取得する以前からリボルバーは存在していた。
しかし、それまでのリボルバーは手動式のものしかなく連射・速射が困難であり、現在のリボルバーの基本形を実用化させたのはやはりSamuel Coltである。Colt本人もリボルバー式の銃を実用化させただけであるという認識があり、自身をリボルバーの発明者であると評することはなかった。
Samuel Coltの貢献は実用的リボルバーの開発だけでなく、銃器パーツ製造の機械化、いわゆる製造ラインの構築にもある。ただし、実際に製造された銃に対し軍の予算が法律によりつけられないなど資金繰りに苦難し、最初の倒産を招く結果となった。
COLT再起のきっかけとなったのは1847年の米墨戦争である。合衆国政府、COLT製リボルバーを手に入れていた陸軍大尉サミュエル・ウォーカー、更にはテキサスレンジャーズから1,000挺のリボルバーを受注し、これにより銃器メーカーとしての再起を成功させた。追加の受注も得てCOLTは順調に業績を伸ばし事業を拡大。当時の工場は従業員用の宿舎や労働時間と休憩時間の制定、福利厚生も充実しているなど先進的な企業であったと言われている。
M16製造権の取得と放棄
長きに渡ってアメリカ軍の制式ライフルとなっているM16だが、その製造がCOLTよって行われてきたこともあり開発もCOLTと勘違いされることも多いが、それは誤りである。ベースガンであるAR-15のARはArmalite Rifleの略であり、開発はFairchildの銃器部門として設立されたArmalite(アーマライト)により行われた。
AR-15の原型にあたる7.62mm口径のAR-10がアメリカ軍のトライアルに落選すると、Armaliteは経営難によりAR-10とAR-15の製造ライセンスをCOLTに売却。しかしその数年後、改良を重ねたAR-15はM16としてアメリカ軍に制式採用され、COLTの地位を揺るがないものへと押し上げていくのだった。
しかし、時は長期間に渡るベトナム戦争下である。より多くのM16を必要としたアメリカ政府は1967年にその製造権をCOLTより取得。COLT以外のメーカーでも委託製造が開始される。COLTがM16の製造権を得ていたのは約8年程度と実に短いものであった。その後も大きな需要は続きCOLTは引き続きM16の製造を続けるが、1989年の冷戦終結を経てアメリカ軍からのM16の受注は終了する。その後の展開は先述の通りである。
盛者必衰という言葉を体現したかのようなCOLTではあるが、逆に捉えれば幾度となく訪れる危機を乗り越え200年近く存続している企業でもある。CZの協力を得て、再び日の目を浴びることが期待される。
COLT の歴代製品
リボルバー
コルト・パタースン
コルト・ウォーカー
M1848 ドラグーン
M1851 ネイビー
M1861 シェリフズ
M1877 ライトニング
M1878 ダブルアクション
M1889ニュー・ネイビー
M1892
コルト・ニューポケット
コルト・ニューポリス
コルト・ニューサービス
M1917
SAA ピースメーカー
アナコンダ
キングコブラ
ディテクティブスペシャル
パイソン
ローマンMk-III
トルーパーMk-III
オフィシャル・ポリス
オートマチック・ピストル
M1900
M1903
M1905
M1908
ベストポケット
コルト・ガバメント
ウッズマン
ジュニアコルト
.380 ポケット・モデル
アサルトライフル
M16
コルト・コマンドー
M4カービン
CM901
ローエンフォースメント・カービン
SCW
グレネードランチャー
M79 グレネードランチャー
M203 グレネードランチャー
EAGLE グレネードランチャー
狙撃銃
サワー(スナイパーライフル)
PGWDTI TIMBERWOLF
機関銃
コルト・ブローニングM1895重機関銃
ブローニングM1917重機関銃
ブローニングM1918自動小銃
機関砲
チェーンガン – コルト・カナダのみ生産
タクティカルペン
タクティカルペン
CT437
CT438